印象セリフ
「あそこは楽園だよ」
製作国:日本
製作年:2019年
上映時間:129分
▼予告編▼
映画『楽園』本予告/綾野剛・杉咲花・佐藤浩市/衝撃のサスペンス大作
はじめに
皆さんは”イヤミス”という言葉をご存じだろうか?
ミステリーというジャンルの中でも更に、
読んだ後に「イヤァ~な気持ち」になる小説のことを指してから始まったジャンルである。
殺人などの衝撃的な事件が起こってもラストには事件解決するとは限らなかったり、
人間の奥に潜む心理などを描写し、見たくないと思いながらも読み進めてしまう、
冷や汗がたっぷり出るような後味の悪いジャンルだが、非常に人気だ。
その中でも犯罪者の心理を見事に描くことに長けている作者が吉田修一である。
芥川賞受賞歴などもあり、純文学と大衆向け小説どちらでも賞を受賞している才能の持ち主で映画化された代表作には『悪人』『怒り』『さよなら渓谷』などがある。
今作はその吉田作品の中の短編集『犯罪小説集』を原作とした映画作品。
しかも綾野剛×杉咲花×佐藤浩市の豪華キャストが予告編の時点から感情をさらけ出しまくりな演技をしている!
それは期待度を上げてみてもいいよな!!?
ということで観てきました!
どうも、意外とこの手のジャンルの小説が好きなキミシマムザ裕君です。
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簡単あらすじ
ある夏の日、青田に囲まれたY字路で少女誘拐事件が起こる。事件は解決されないまま、直前まで被害者と一緒にいた親友・紡は心に深い傷を負う。それから12年後、かつてと同じY字路で再び少女が行方不明になり、町営住宅で暮らす孤独な男・豪士が犯人として疑われる…(映画.com引用)
感想
罪と罰と人と…
人は何故罪を犯すのか?
そんな心理に迫った意欲作。個人的には結構好きだが、賛否は分かれそうだ。
上述のとおり原作は短編集で5つの物語に分かれているらしいのだが(未読)、
その中でも別の短編『青田Y字路』『万屋善次郎』の二つを元にしているらしい。
見ている途中で話に繋がりがあまり見えないような不思議な違和感はこれだろう。
つまり、題材が似ているけど別の話をうまく絡めて1つの作品に昇華させたのだ。
しかし見終わった後は綺麗に繋げたなと感心した。
原作が元々クオリティが高いのもあるだろうが、
今作に関しては上手く映画ならではのオリジナリティを出せていたのだと思う。
田舎の限界集落に漂う抜け出せない退廃的な空気。
出る杭が叩かれてしまうような陰湿な集団心理。
そして犯罪を犯してしまう人々の気持ちやそれまでの経緯を見せて、
我々に何かを問いかけるような作品だった。
とある少女失踪事件が物語の中心となって常に話題に上がるのだが、
その真相に関しては色々と視聴者側が考える必要がありそうだ。
以下は自分の考えをいくつか書きまとめてみたので参考にして頂けばと思う。
(※ネタバレを含むため、隠してあります。鑑賞後の方向けになります。)
①中村豪士真犯人説 12年後の現在、結局村の人々の早とちりにより冤罪で追い詰められて焼身自殺をしてしまった豪士。 しかし彼の行動や言動からは異様におかしな点が目立ち、作中でも一番怪しまれている人物となっていた。 そんな彼が犯人である可能性に繋がるアクションは以下の通り、 そして最後に愛ちゃんが話した人物であり、 その後にとぼとぼと彼女の背中を追うシーンで終わるのだ。 ただ、もう一つの可能性としては単純に彼が追いかけた後に何かしらの事件や事故にあった愛ちゃんを助けることが出来なかった自責の念でそんな行動をとってしまったのかもしれないという説もある。←②中村豪士説目撃者 そういう意味では中村豪士だけで二つの説がありえるということになる。 ↓ここから先は若干妄想的な考察になるのでご了承下さい(笑) ③善次郎真犯人説 最終的に周辺住民とのゴタゴタで村八分を受けた結果気が狂って6人もの殺人を犯してしまった可哀そうな善次郎さん。 しかし果たして彼は悲しみの果てに初めてこんな行動をとってしまったのだろうか? 彼にも怪しい点は何個かあったように思える。 人間の白骨化には地中に埋められた状態で7~8年でなるという。 事件から12年が経ったあの時系列では病死した奥さんのものより愛ちゃんの死体だと考えることも出来るかもしれない。ちょっと無理があるかな? ④野上広呂真犯人説 爽やかな笑顔と裏腹に結構猟奇的な執着心で気持ち悪かった彼。 まるで美談のように紡ちゃんとの関係が良好になっていくがそもそも、 彼女に対する執着が”地元に残ったのが俺ら二人だけだから”という薄い理由なのもおかしい。それだけのために彼女に行った数々のストーキング行為は以下のとおり 等々だ。仮に彼が少年時代から彼女を好きだった場合、常に一緒にいた愛ちゃんが邪魔だった?故の何かしら絡んでくる可能性は0ではないかもしれない。 そしてタイトルにもなっている”楽園”というキーワードをセリフで使うのは綾野剛演じる豪士と彼が演じる広呂だけなのだ。何かを感じてもおかしくはない。 っていうさらに無理がある考察(笑) ⑤愛ちゃん生存説 これは考察というよりこうであって欲しいという”小さな希望”である。 紡と広呂が東京と飲み終わった帰り道、紡がふと聞こえた「愛華行くよ~」の言葉 近くで自分と歳が同じくらいの女性がふとこちらを見て少しはにかむ。 その姿はまるで成長した愛ちゃんのようだった…。 その出来事は偶然かもしれないし、紡がそう思っただけかもしれない。 しかし作品全体を通して強調される”田舎の閉塞感・退屈さ”からの脱却を愛ちゃんが小さい頃に計り、小学生ながらに大胆に家出に成功していたのだとしたら…? そこに中村豪士が絡んでいて、車で協力をしていたんだとしたら…? 彼女の死体は見つかっていない、証拠はランドセルだけだ。 どこかで愛ちゃんが元気に生きているかもしれないという可能性があるだけで、 この説は信じる価値があるんじゃないだろうか??愛ちゃん失踪事件に関するいくつかの考察
↑以上、現実的なものからありえなそうなものまで6つの考察。
キャスト
綾野剛
筋肉モリモリの暗殺者でもなく、根っからの悪人でもない。
弱気で”外国人”というだけで周りから疎外されてきた哀しい男を演じる。
全国の綾野剛ファンにはこういう守ってあげたくなる役はたまらなくオイシイんじゃないだろうか?
とりあえずそのダサイシャツインをやめてくれ!(笑)
杉咲花
自分の中では中学生~高校生くらいの印象だった彼女ももう22歳!
子役というよりは実力派若手女優としてすでに一定の評価を得ているでしょう。
事件以来暗くふさぎ込んでしまい、
”自分だけ幸せになっていいのか”
という疑問と常に向かわなくてはいけない難しい役柄を見事に演じていた。
あと可愛い。
佐藤浩市
安定の実力派。村の人々の雑用などを買って出る”万屋善次郎”を見事好演。
前半は限界集落の最年少(笑)として村の未来を担うかっこよい役柄だったが、
後半からは彼の演技力がとても試されたでしょう。
あと生え際が最近心配です。
その他
あとは若手から村上虹郎くんや石橋静河の参戦。
そして予告編でも

あいつが犯人だと言ってくれ!
と叫んでいた大ベテラン柄本明の熱演。
あと妙に色っぽい中年女性を片岡礼子が演じていた。
まとめ
二つの小説を上手くまとめる映画的手法は上手くいっていたが、
若干違和感が残るのも確かだったし、オチに納得いかない方もいるかもしれないが
個人的にはこのモヤっと感が好きで役者陣の熱演を評価していきたい。
それにしても吉田さん原作映画化しすぎじゃない?!
日本版スティーブ・キングか!(笑)
こんな人にオススメ
- イヤミスが好きな方
- 吉田修一原作に安心感のある方
- 綾野剛はじめとする豪華キャストを観たい方
おあとがよろしいようで…