製作国:日本
製作年:2019年
上映時間:124分
▼予告編▼
はじめに…
皆さんの周りには”どうしようもないクズ男”がいるだろうか?
普通のサラリーマンを一応こなせていると自負している私は周りも含めてそこまでクズ男はいないのだが、世の中にはごまんと溢れている。
今作はそんなどうしようもない奴だけど何故か憎めない、何故か周りから愛される男の”喪失と再生”の物語である。
どうも、よく周りに
「え、働いてるの? 遊び歩いてると思ってた」
とディスられる都内サラリーマンこと、
キミシマムザ裕君です。
さっそくレビューを!
簡単あらすじ
仕事も続かず無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことになる。しかしそこで家族は最悪の事件に巻き込まれて……
感想
大切なものを失った男。
とても心に染みる作品。
白石和彌監督作品(後述)なためてっきりグロエロサスペンス映画かと思いきや、
1人の男に常にフォーカスを当て続ける喪失と再生のピュアなヒューマンドラマであった。
とにかく今作の酷さは徹底的に主人公を追い込むところにある。(褒め言葉)
ギャンブルから抜け出して新天地で心を入れ替えようとするも次々と現れる誘惑然り、
今作のターニングポイントとなる”ある事件”然り、
その後の怒涛の展開が全て主人公に降りかかる。
さらにその悲運なだけでなく、彼は救いようのない弱い男なのだ。
そこに”震災からの復興”も重ねて描くドラマはとても軽々しく観れるものじゃないが、ズシンと響くものがあった。
監督:白石和彌
「香取さんはトップのアイドルであり、トップの役者。
今後役者をやらないのはもったない!!」
と豪語するほどしんごちゃんにゾッコンになってしまったこの監督。
『孤狼の血』『日本でいちばん悪い奴ら』『凶悪』他多数
”クズや人間のどん底を描かせたら右に出るものはいない”
とんでもなく勢いに乗っている社会派監督なのだ。
彼の描く暴力描写や底辺の人間の心理描写の説得力は半端じゃなく、
作品によって観る者を絶望の淵に立たせたり、
生きる希望を与えたりしてくれるのだ。
そんな手加減なしの監督が褒め称えるほどなのだから、
香取慎吾という男は底知れないのだろう。
彼が主演だったからこそ監督は震災をテーマに取り組むことが出来たとも言っているのだ。
キャスト
香取慎吾
今まで見た事のないしんごちゃん!
明るくて元気な彼がここまでダークサイドに落ちるとは!
といっても彼のことはそこまで詳しくないのだが、元々愉快なキャラクターと素敵な笑顔の裏側には底知れぬ不安定な感情があるんじゃないかと思っていたので今回の役は案外ハマり役だったんじゃないかと思う。
色んな意味で身体を張って、今作中で最も汚れてボロボロになるのに何故か嫌いになれない。それが彼の魅力と演技力のおかげであることは言うまでもない。
映画好き界隈ではアイドルなどの主演起用を嫌う傾向があり、自分もそこまで賛成できないタイプなのだが、今作のしんごちゃんに文句を言う者は誰もいないだろう。
「演じることは苦手だ」
とインタビューで語っていたというが、この体当たり演技は今までのイメージの脱却などの思いを込めた一世一代の捨て身タックルだったのかもしれない。
リリー・フランキー
邦画界の何でも屋。
困った時のリリーフランキーである。
気さくなおじさんもサイコパスもお任さあれな彼は今作では”田舎にいるめちゃくちゃ世話焼きなおじちゃん”を見事に演じていて相変わらず驚かされる。
彼の演技の振れ幅はどこまで広がるんだ。毎年今が1番ピークなんじゃいか?
と錯覚してしまう。
恒松祐里
目の保養の娘ちゃん。
彼女のおかげで重苦しい雰囲気に花が添えられたのは間違いない。
ストーリー上の役割も非常に重要で、引きこもりだった彼女の成長が鍵となっているのでぜひご注目を。
他にもお爺ちゃん役の吉沢健さんの渋すぎる演技やママ役の西田尚美さんの色っぽさと元気さと口うるさいママみが脇をしっかり固めていた。
まとめ
そもそも”凪”とは海において風がやみ、波が一切起きない海面の状態を言う。
今作のタイトルの意味を考えてみた。
主人公の人生で起こる様々な障害や事件を”波”に例えて言うならば彼は”凪”が訪れて人生が平穏になることを待ち続けているのだろう。
今作の終わりで凪を迎えることは出来たのだろうか?
ここからは自分の考えです。
おそらく主人公は完璧に改心できた訳では無く、どこかのタイミングでまたギャンブルにハマってしまうだろう。 つまり完全に凪は訪れていないのかもしれない。 ただし変われることを信じて凪を待ち続けることに人生の意味を見いだしてもいいんじゃないだろうか。※ネタバレ※
こんな人にオススメ
- 白石監督が好きな方
- 香取慎吾の怪演を見たい方
- クズ男を嫌いになれない方
おあとがよろしいようで…
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